バイクを降りても、かっこいい上着。

バイクを降りても、かっこいい上着。

COLUMN

バイクを降りても、
かっこいい上着。


バイクに乗る日の上着選びは、意外とむずかしいものです。

バイク専用の上着は、バイクの上では文句なしにかっこいい。でも、降りてお店に入ると少しだけ浮いてしまいます。反対に、街で気に入っている服は、走り出すと風をはらんで背中がふくらみます。

乗っているときも、降りたあとも、同じ自分でいたい。

そんな上着は、探してみると多くありません。秋のいま、何を選ぶか。代表的なブランドの話も交えながら考えてみました。

レザージャケットでバイクにまたがるライダー

01 — 見るところは、3つ

ひとつ目は、丈です。前に傾いたときに背中が出ず、シートの上で裾がだぶつかない長さが理想です。

ふたつ目は、ばたつきです。大きめのサイズは、走ると風でふくらみます。どんなに良い服でも、ふくらんだ瞬間にかっこよさは逃げていきます。

みっつ目は、降りた姿です。ヘルメットを片手に街を歩いて、自然に見えるかどうか。この3つで見ていきます。

02 — レザージャケット

やはり、ここから始まります。

1928年、ニューヨークのアーヴィング・ショットが、ジッパーで前を閉じるバイク用の革ジャンを作りました。名前は、好きだった葉巻からとって「パーフェクト」。いまのライダースの原型とされる一着です。斜めに走るジッパーは、飾りではありません。前傾姿勢をとっても胸元がたるみにくく、風も入りにくい。乗るための形が、そのままかっこよさになりました。

Schottのレザージャケット 613

Schott 613。肩の星から「ワンスター」と呼ばれます。

イギリスなら、Lewis Leathers。1892年にロンドンで生まれた老舗で、裏地の赤いキルティングが目印です。アメリカのVansonは1974年にボストンで始まり、レーサーの革ツナギで名を上げました。社名は、創業者ふたりの名前を合わせたものだそうです。

Lewis Leathersのレザージャケット Bronx

Lewis Leathers Bronx。裏地の赤が目印。

風に強く、体に沿うので、ばたつきません。傷も味になります。難しいのは降りたあとで、ダブルのライダースは街では少し気合いが入って見えます。街で着る時間が長いなら、ジッパーがまっすぐなシングルという手もあります。

03 — ワックスドジャケット

街の服に見えて、じつはバイクとの縁がいちばん深いかもしれません。

1936年、バイク好きだったダンカン・バーブァーが、過酷な耐久競技「インターナショナル・シックスデイズ・トライアル」に出るライダーのために、ワックスを染み込ませた綿でスーツを作りました。これがBarbour Internationalの始まりで、今年で90年になります。1957年には、この大会に出たライダーの97%以上が着ていたそうです。1964年には、スティーブ・マックイーンもアメリカチームの一員として、これを着て出場しました。

Barbour Internationalのジャケット

Barbour International。胸のワッペンが目印。

同じイギリスのBelstaffも忘れられません。1924年創業で、1948年に出たTrialmasterは、スコットランドのトライアルを走るライダーのために作られました。

降りたあとの自然さは、この中で一番だと思います。古い建物にも、カフェにもよく馴染みます。ただ、ワックス特有の匂いとベタつきは好みが分かれるところ。そこまで含めて好きになれるかどうかです。

04 — フライトジャケット

空の服ですが、バイクにもよく合います。理由は単純で、どちらも風の中で着る服だからです。

MA-1は1950年代にアメリカ軍で生まれました。狭い操縦席で動きやすいように丈が短く、裾と袖はリブで締まっています。走っていても風が入りにくい作りです。その後を継いだのがCWU-45/Pで、1970年代に外側の生地が燃えにくい素材に変わりました。形も少し変わり、MA-1より見た目は静かです。

Alpha IndustriesのMA-1

MA-1。衿元からのぞく裏地のオレンジ。

Alpha IndustriesのCWU-45

CWU-45。前の斜めのフラップが目印。

定番はAlpha Industries。米軍にMA-1を納めていた、アメリカのメーカーです。もっと深く行くなら、日本のBuzz Rickson's。1993年に始まり、当時のフライトジャケットの復刻にとことんこだわってきました。

サイズ感で、印象が大きく変わる上着です。細めに着ても、ゆったり着ても、それぞれの良さがあります。個人的に、街で一番さりげないのはCWUだと思います。MA-1と間違えられても、別にかまいません。

05 — Gジャン

暖かい秋の昼なら、Gジャンがいいと思います。

いま多くの人が思い浮かべる形は、1962年に出たLevi'sのType IIIがもとになっています。Levi'sによると、基本の形は発売からほとんど変わっていないそうです。60年以上、変える必要がなかった形です。

デニムジャケットの衿元

クラシックなバイクとの相性は言うまでもありません。丈も短く、降りれば街に溶け込みます。弱点は、風を通すこと。朝晩や高速道路では寒いので、走る時間を選ぶ一着です。

06 — 街では最高。でも、少し惜しい

正直に言うと、バイクでは少し惜しい上着もあります。

M-65は、1965年に登場したアメリカ軍のフィールドジャケットです。大きなポケットが4つあり、荷物が少なくて済むのはツーリングにも嬉しいところ。ただ丈が長めで、シートの上では裾がだぶつきやすいです。

M-65フィールドジャケット

M-65。街で着るなら、文句のつけようがありません。

コーチジャケットは、スポーツの指導者が羽織っていた上着が原型とされています。軽くて、街にはこれ以上ないほど馴染みます。ただ生地が薄いので、走ると風でふくらみます。バイクを降りたあとのための服です。

07 — 結局、何を着るか

どれか一着が正解、ということはないと思います。

朝晩も走るならレザー。街で過ごす時間が長いならワックスド。気負わずさりげなくいくならCWU。昼に少し走るだけならGジャン。そのくらいの選び方でいいのではないでしょうか。

いまの季節は、そうやって迷えること自体が楽しいものです。真冬になれば、選択肢はぐっと減ってしまいます。

バイクに乗る日と、そうでない日の服を、分けなくていい。
そう思える一着があると、バイクに乗る日はきっと増えます。
みなさんは今年の秋、何を着て乗っていますか。

写真:Rider by Laimis B(CC BY 3.0)/ Schott 613 by Rundvald(CC BY-SA 4.0)/ Lewis Leathers Bronx by Timken Bearing(CC BY-SA 3.0)/ Barbour International by Menswear Market(CC BY 2.0)/ MA-1・CWU-45 by DirkF601(CC BY-SA 4.0)/ jeans jacket by Muffet(CC BY 2.0)/ M-65 field jacket by Godzilla0936(CC BY-SA 4.0)。いずれもサイズを縮小して掲載。
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