「革に見える『傷』は、傷じゃない — 天然皮革の6つの表情」
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革に見える「傷」は、傷じゃない
— 天然皮革の6つの表情
革製品を手にしたとき、表面に小さなシワや色の濃淡、筋のような模様が見えることがある。はじめて見ると、傷や色ムラのように感じるかもしれない。でもその多くは、天然皮革ならではの表情だ。
僕は機械系エンジニアの世界にいた人間だ。そこでは、すべてが図面どおりに均一であることが求められた。寸法も、形状も、表面も。許容範囲のど真ん中を狙うのが、職人の腕の見せどころだった。
でも革は、その常識を静かに超えてくる。
革は、動物が生きてきた時間そのものだ。育った環境、動かしてきた部位、その個体だけが歩んできた日々。それらが、一枚いちまいに違う表情として刻まれている。同じものが、ひとつとしてないこと。それが、革という素材の本当の魅力だと思う。
今回は、MOTOREALの姫路レザーにも見られる、天然皮革ならではの6つの表情について紹介する。
01 — 染めムラ
染めムラとは、革の表面に見られる色の濃淡のことだ。天然皮革は部位ごとに繊維の密度や質感が異なるため、染料の入り方にも差が生まれる。ひとつの革の中でも色が均一ではなく、わずかな濃淡が見られることがある。人工的に塗り固めた色とは違う、自然な深みがそこにある。
02 — 血筋
血筋とは、動物の皮膚の下を通っていた血管の跡が、革の表面に筋のように現れたものだ。細い線のように見えることが多く、まっすぐなものや、枝分かれしたように見えるものもある。人工素材には絶対に出せない、天然皮革ならではの個性のひとつだ。
03 — トラ
トラとは、首や肩など、よく動く部位に見られるシワ模様のことだ。波のように入る筋やシワが特徴で、革によって出方は異なる。一見すると傷のように見えることもあるが、これは生きていた証として現れる自然な表情だ。革らしい力強さを感じられる特徴のひとつである。
04 — バラキズ
バラキズとは、動物が生きていたときについた小さな擦れや傷跡のことだ。草木に触れたり、体をこすったりすることで自然にできたもので、革になったあともその痕跡が残ることがある。大きく目立つものや使用に影響するものは避けているが、小さなものは天然素材ならではの個性として残る場合がある。ひとつとして同じものがない、本革らしい表情のひとつだ。
05 — ピンホール
ピンホールとは、毛穴の跡が小さな点のように見えるものだ。天然皮革では、表面にこうした細かな点が見られることがある。特にナチュラルな仕上げの革では、このような表情が比較的わかりやすく現れる。とても小さなものだが、革がもともと持っていた自然な表情のひとつである。
06 — ホクロ
ホクロとは、革の表面に見られる小さな黒い点や色の濃い斑点のことだ。もともとの皮膚にあった色素の名残で、天然皮革ではまれに見られる。人工的に作られたものではなく、自然に生まれた個性だ。一点ごとの違いを感じられる、天然素材ならではの特徴のひとつである。
ひとつとして、同じものがない
こうした表情は、一見すると傷やムラのように見えるかもしれない。だが、どれも天然皮革だからこそ見られる、その革の個性だ。
工業製品のように均一なものを求めるのではなく、ひとつだけの表情を持つものを選ぶ。それが、革製品を持つことの意味だと、僕は思っている。
あなたの手元に届く一本も、ひとつとして同じものはない。その違いも含めて、革の魅力として楽しんでもらえたら嬉しい。